
山形大学医学部放射線医学講座
放射線腫瘍学分野
Department of Radiology, Division of Radiation Oncology, Yamagata University Faculty of Medicine.
当科診療案内
1.外部照射
1.重粒子線治療
重粒子線治療は炭素イオンを光速の70%程度まで加速して、患部に照射する放射線治療です。
通常のX線を用いた放射線治療と比較して線量集中性に優れ、また破壊力も強いため、正常組織を温存しながら患部により強い治療効果が期待できます(図1)。
保険適用も進んでおりこれまでに12の疾患・病態について保険診療での治療が可能になっています。ただ大掛かりな施設が必要であるため、国内に7施設のみで、関東以北では山形大学だけです。そのため東北一円の重粒子線治療が適応になる患者さんに治療が提供できるような体制づくりを行っています。
山形大学医学部重粒子線センターは図1のように世界で3番目の回転ガントリー照射装置を備え、最先端の重粒子線治療が可能です。この治療の中核を我々の放射線腫瘍学分野が担っています。重粒子線治療の詳しい内容はこちら(山形大学医学部東日本重粒子センター)をご覧ください。

図1 大きな肝腫瘍への線量分布(正常肝を守りながらの治療が可能)

図2 回転ガントリー照射室(重粒子線)
2.リニアック(X線治療)
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Radixact X9(accuray社)
2025年4月から導入した放射線治療装置で、山形県内では初の導入になります。
へリカルCT技術と放射線治療技術を融合したもので、診断用CTのようなドーナツ状の装置内の中に治療用のX線を発生させる直線加速器(リニアック)が搭載されています。
寝台が進むと同時に、360°方向から放射線を照射することにより強度変調放射線治療(IMRT)を行います。
Radixactの特長としては寝台を移動させながら治療を行うため、最大で135cmの範囲を一度で治療することが可能で、従来まで複数回に分けて治療していたものが一度に治療することが出来るのが特徴です。

また、患者体表面監視システムであるCatalyst™(カタリスト)を搭載しており、体表面のリアルタイムモニタリング技術を用いて治療中の患者様の体動や位置ずれを正確に検知し、安全で確実な治療が可能です。
こちらを用いて乳房予防照射などを開始しています。

さらに、Synchrony®(シンクロニー)システムを搭載しており、肺や肝臓など呼吸により動く腫瘍に対して、リアルタイムで動きに追従しながらの定位照射が可能です。
これにより、腫瘍にしっかりと放射線を当てつつ、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えることができます。
全身照射(TBI:Total Body Irradiation)への応用
Radixact X9は、骨髄移植前の全身照射(TBI)におけるIMRT対応しており、従来のTBIと比べて、均一な線量分布を担保しつつ、遮蔽したい正常組織の線量軽減の両立が可能です。
当院では日本初となるCatalyst™を用いたTBIを開始しています。


・TrueBeam Edge (varian社)
定位放射線治療に最適化されたTrueBeamシリーズのリニアックです。
放射線治療の中でもよりピンポイントな照射である定位放射線治療に必要なサブミリメートルの(ミリメートルよりも細かい)精度を有し、FFF(Flattening Filter Free)beamによる高線量モード、高分解能な照射範囲の制御(マルチリーフコリメーター2.5mm)、6軸補正が可能な治療台など、精度の高い技術で定位放射線治療が可能で、今後、定位放射線治療での使用が望まれる機種です。
特に転移性脳腫瘍に対してEdgeに標準搭載されているHyper Arcが使用可能であることは非常にメリットが大きいと言えます。

Hyper Arcによる多発性転移性脳腫瘍の定位照射
脳転移の照射の際にはノンコプラナー照射が必要とされていますが、HyperArcは治療計画のワークフロ ー化などによって、複雑なノンコプラナー照射を短時間で効率的に計画ができるように設計されています。
また、治療計画ソフトウェアに専用のツールを搭載することで、多発性転移性脳腫瘍の定位手術的照射で課題となっていた、標的腫瘍間の線量や正常組織への線量の低減が可能です。
2.腔内照射
小線源治療は放射性同位体元素を密封した線源を体内に挿入し、病巣へ直接放射線を照射する方法です。
線源の移動する領域の周囲に高い線量を集中して照射することが可能ですが、線源から離れた位置での線量は低くなるという特徴があります。
小線源治療は子宮頸癌、子宮体癌、前立腺癌、頭頸部癌など様々な領域の悪性腫瘍で適応があり、当院では主に子宮頸癌に対する「腔内照射」を行っています。
腔内照射では「Remote Afterloading System;RALS」という装置を用いて、遠隔操作で線源が体内へ移動するため、医療スタッフの被曝はありません。
・子宮頸癌に対する腔内照射・組織内治療併用腔内照射
腔内照射では子宮と腟などの管腔臓器内にアプリケータと呼ばれる管状の治療器具を挿入し、線源を一時的に通して病巣の近くから直接放射線を照射します。
子宮・腟から離れた部位へ腫瘍が進展する場合には腫瘍へ十分な線量を照射することが難しい場合があり、必要に応じて、通常の腔内照射に加えて腫瘍に直接針を刺入する組織内照射併用腔内照射(ハイブリッド照射)を選択することができます。
また、症例により体外照射や化学療法を組み合わせて同時化学放射線治療を行います。
・画像誘導小線源治療 Image-guided brachytherapy; IGBT
当院では腔内照射のアプリケータを挿入した状態でCTを撮影しています。
腫瘍と正常臓器との位置関係を正確に把握して治療計画を作成するため、正常臓器への線量を抑えつつ、腫瘍局所へ高い線量を投与するために線源を留置する位置や停留時間を調整して、最適化された治療を行えることがメリットです。


婦人科腔内照射の線量分布
3.非密封放射性同位元素を用いた放射線治療
放射線同位元素(特に非密封線源)を注射や内服等で体内に投与して行う治療をラジオアイソトープ(RI)治療といい、当院では放射線治療科が担当しています。
当院では主に以下の3つの治療を行っています。
・放射性ヨウ素内用療法
主に分化型甲状腺癌に対する治療として行います。甲状腺癌がヨウ素を取り込む性質を保っていることを利用し、癌細胞にヨウ素131 (I-131)を取り込ませることで、I-131が放出するベータ線により癌に対する放射線治療を行います。
ベータ線の飛程は数㎜であるため、周辺組織へのダメージが小さい治療を行えます。
一方でI-131はベータ線のほかにガンマ線も放出するため、患者さんはI-131のカプセルを内服した後、線量が基準を下回るまでの数日間、特殊な病室へ入院します。
入院中の管理も放射線治療科が担いますが、緊急時を除き放射線治療医や看護師も病室内には立ち入りませんので、わたしたちスタッフの被ばくは最小限です。

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以下は甲状腺癌の放射性ヨウ素内用療法施行例です。
両肺に多発肺転移があり、治療時のI-131シンチグラフィーでは肺野に強い集積が見られます。

6か月後、再治療終了時のI-131シンチグラフィーでは肺野の集積は消失しています。

・塩化ラジウム注射
骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌に対する治療として行います。
塩化ラジウム(Ra-223)がカルシウム類似体として骨代謝の亢進した骨転移部位に取り込まれることを利用して、Ra-223が放出するアルファ線により癌細胞への治療を行います。
アルファ線の組織内飛程は100μm(およそ細胞10個分)未満であるため、周辺組織に対する影響は非常に小さく、また特殊病室への入院も不要で、外来で静脈注射を行うことで治療ができます。

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・ルテチウムオキソドトレオチド注射
神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine tumor: NET)に対する治療として行います。
NETの多くにはソマトスタチン受容体が高発現しています。
ソマトスタチン受容体に結合するペプチド(ソマトスタチンアナログ)をルテチウム(Lu-177)で標識したルテチウムオキソドトレオチドを点滴で投与することで、Lu-177から放出されるベータ線による腫瘍増殖抑制を目指す治療です。
Lu-177はガンマ線も放出するため、患者さんは線量が基準を下回るまでの数日間、特殊な病室へ入院します。
入院中は緊急時を除き放射線治療医や看護師も病室内には立ち入りませんので、わたしたちスタッフの被ばくは最小限です。

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